産業医収入の税務上の注意点
2026/01/29

品川区五反田で創業して34年目をむかえるミネルバ税理士法人では、医療業界に特化して税務会計の支援を行なっています。最近は精神科・心療内科クリニックの開業に関するご相談が増えています。
また、産業医としての活動についてご相談を受けるケースも少なくありません。産業医業務を検討される中で、税務上の整理に悩まれる方が多いため、産業医として活動する場合に押さえておきたい注意点を整理してみました。
精神科・心療内科クリニックや産業医の相談が増えている背景
厚生労働省の調査によれば、精神疾患を有する外来患者は平成29年の389.1万人から令和2年は586.1万人と大きく増加しています。これが精神科・心療内科クリニックの開業相談増えている要因ではないかと思っています。
さらに精神科・心療内科医の開業相談に加え、最近は産業医としての活動を検討する方からの相談も増えています。制度として一定規模以上の企業に対して産業医の関与が求められていることが理由の一つです。労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業場について、産業医の選任が義務付けられています。2019年には労働安全衛生法が改正され、産業医の担う範囲が大きくなったことも要因となっています。
産業医の報酬は事業所得か、給与所得か
産業医の報酬について最も多いご質問が、「事業所得になるのか、それとも給与所得なのか」という点です。
結論からいえば、契約書の名称だけで決まるものではなく、実態に基づいて判断されます。ただし、実務上は給与所得として整理されるケースが多い点には注意が必要です。国税庁の見解でも、個人の医師が事業者から支払を受ける産業医としての報酬については、所得税法上、原則として給与所得に該当するものと整理されています。
参考:産業医の報酬(国税庁)
たとえ業務委託契約という形式であっても、業務内容や報酬の決まり方、指揮命令関係などの実態によっては、給与所得として源泉徴収が必要になる点には注意が必要です。
産業医収入と精神科・心療内科クリニックにおける概算経費の関係
精神科・心療内科クリニックでは、大きな設備や多額の経費を必要としないため、いわゆる概算経費(社会保険診療報酬に係る所得計算の特例)を用いて確定申告を行うケースが多く見られます。
この特例は、医業または歯科医業を営む個人事業主や医療法人を対象とした制度です。そのため、たとえば心療内科クリニックとしての売上が概算経費を使う上限に達していても、産業医として得た報酬が給与所得として扱われる場合、概算経費の対象となる医業収入とは別に扱われます。(事業所得の総収入金額による上限もあるので、その点には注意が必要です。)
そのため、概算経費の社会保険診療部分の売上制限とは切り離して収入を管理することができ、全体の収支設計を考えるうえで、産業医としての収入が一つのポイントになる場合があります。
法人化した場合の注意点
医療法人や株式会社などの法人形態で産業医業務を受託することも可能です。この場合、産業医業務に関する対価は法人の売上となります。ただし、最終的に役員や従業員へ還元する際には、役員報酬や給与として支払うことになり、個人レベルでは給与課税が生じます。また、法人で受け取る委託料は消費税の課税対象となる場合がある点にも注意が必要です。
法人化によって必ずしも手取りが増えるとは限らないため、全体設計を踏まえた検討が欠かせません。
ミネルバ税理士法人としての産業医支援
ミネルバ税理士法人は五反田で創業して34年、従業員60名規模の体制で医療業界の支援を行ってきました。心療内科・精神科クリニックについても、開業前のご相談から開業後の税務・会計まで、継続してサポートしています。
それだけではなく、たとえば精神科に特化した訪問看護事業の立ち上げや、株式会社で産業医として事業を始める方の支援などもしています。設立からサポートする場合は手数料0円からさらに割引をして会社設立支援をするなど開業する方にとって安心してもらえる取り組みをしています。
社会的に精神科・心療内科を必要とする人たちが増えていることで、産業医が必要とされる機会は今後も見込まれます。一方で、産業医収入の税務上の取り扱いは、契約形態だけでなく実態によって判断されるため、注意が必要です。
開業や業務開始の初期段階で整理をしておくことで、後々のリスクを抑え、納得感のある形で収入設計を行うことができます。産業医の収入の扱いに迷われている場合は、一度お気軽にご相談いただければと思います。
